目が鯖
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97年9月某日。すでに9回の旅を終えたむぎの今後の教育方針について、最高首脳会議(出席者むぎ父、むぎ母)が行われ、即日「たび犬とび犬宣言」が発表された。快眠快食快便を標榜し自堕落に暮らしているむぎであったが、実は彼女には海より広い野望があった。それは「生涯に一万人に撫でてもらう」ということで、むぎ父により「内蔵カウンター」の存在も確認されていた。そのためには車だけでは出会いの場が限られる、いよいよ飛行機に進出だ!という狙いである。目的地の選考は(1)最初だから近場(2)犬が歩きやすい町並み(3)観光客が多い所、という点で、検討の結果、10月10日、むぎは急遽、秋祭りで賑わう飛騨高山に富山空港経由で派遣されることになったのだっ!(大げさ?)。
出発は羽田発の全日空便。意外(?)なことに犬の搬送は予約などいらないらしい。「当日、そのままカウンターに来て下さい」とのこと。よって、連休で賑わう空港ビル内を、ふたふたふた…と、むぎを連れてのし歩く。思いっきり目を引く光景である。富山へは350円/kgと豚バラ肉並の値段。これ以降感じたことだが、羽田の職員さんは概ね鷹揚だ。本当はケージ込みで計16kgくらいのはずだが、目測で「10kgですね」とおまけである(その一方、帰りの空港では必ずきっちり測られるのだ、せめて糞の分くらい…)。かくしてむぎはケージの上から網でぐるぐる巻きにされ運ばれていった…。飛行機は順調に富山空港着。機内からケージが下ろされてくる様子が見える。そしてターミナルで感動の再会…。ところがむぎ「こんなの何でもないっすよ〜」というような平然とした顔をしている。なかなか立派な奴である。そこでケージから出すと足、腹、尻がビシャビシャ。そう「失禁」である。「情けない奴だ」、あきれるむぎ父の声を聞き、また目が鯖になるむぎであった…。 |
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